すべての人へ
Agentic Finance が拓く未来と、私たちが Minara をつくる理由
この手紙を書いている今、金融知性を誰もが使える未来に賭けてくれる人が増えています。その信頼に、私たちはこれまで以上に大きな責任を感じています。だからこそ、なぜ始めたのか、何を信じ、何をつくると約束するのかを、あらためて言葉にしておきたいと思います。
人類は四百年以上をかけて、資本が動くための道を築いてきました。いま、その道を知性が走り始めようとしています。
いつか今日を振り返る人は、モデルのバージョンも、ある日の相場も覚えていないでしょう。それでも、金融が理解し、行動し、協働し、学ぶ知性を得た転換点は記憶に残るはずです。その知性が大きな組織の中から、一人ひとりの手元へ届き始めた時代として。
私は、この新しい時代を Agentic Finance と呼びます。
資本が動き始めた四百年
1602 年、オランダ東インド会社は株式を広く売り出しました。遠い航海のリスクと利益を多くの人が分かち合い、近代証券市場の輪郭が生まれます。会社の未来を、誰かが一部持てるようになった瞬間でした。
1694 年にはイングランド銀行が設立され、公共の信用を支える器ができました。1860 年には送金が電信に乗り、価値は紙や金属より速く移動し始めます。
1944 年、各国はブレトン・ウッズに集まり、戦後の通貨秩序を組み直しました。1971 年にはドルと金の交換が停止され、Nasdaq が市場価格を電子画面に映します。1973 年には 15 か国 239 行が SWIFT を設立し、国境を越える金融情報に共通の言葉を与えました。
2008 年、サトシ・ナカモトは 『Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System』を発表し、中央の保証者を置かずに価値を直接移せる Bitcoin を提案しました。2015 年には Ethereum が始動し、共有ネットワーク上で契約を実行できるようになります。2017 年の Transformer は、機械による言語理解を大きく進めました。やがて大規模言語モデルが考え、Agent が動き、ステーブルコインがインターネット上の決済を担い始めます。
一つの発明が生まれるたび、人と企業、国と国、アイデアと実行の距離が縮まりました。
同じ歴史は、バブル、破綻、独占、収奪も生みました。技術に行き先はありません。門を開くか、壁を高くするかを決めるのは、それをつくり、使う私たちです。
その選択が、いま手渡されています。
五つの技術が、一つの金融基盤になる
Agentic Finance は、五つの力が重なる場所に生まれます。
- 大規模言語モデルは、言葉、情報、意図を理解します。
- Agentは、目標を計画に変え、専門家を束ね、仕事を実行します。
- ブロックチェーンは、価値が移動するための開かれた検証可能なネットワークをつくります。
- デジタル資産は、株式、暗号通貨、指数、コモディティ、債券、デジタルコレクティブルを、ネイティブまたはトークン化された形でプログラム可能な価値ネットワークへ載せます。
- ステーブルコインは、比較的安定した支払いと決済の手段になります。
五つが結びつくと、AI は答えるだけの存在から、仕事を完了する存在へ進みます。目標を理解し、必要な専門性を集め、定められた権限とリスクの範囲で動き、確かめられる記録を残す。重要な判断は、最後まで利用者の手にあります。
自律型 AI 金融インフラの土台は、すでに見え始めています。金融知性は、一部の組織だけが保有する設備ではなくなります。
人はチャートを見続けなくていい
いまの金融画面は、人の目に合わせて作られています。連続する価格を一分、五分、一日に切り、ローソク足へ圧縮する。人は明滅する画面の前で、いくつかの形から市場全体を読み取ろうとします。
Agentic Finance は、この前提を変えます。
Agent はローソク足の確定を待ちません。価格、流動性、リスクを変える出来事を連続して追えます。注文板も、価格と数量だけでなく、意図、期間、リスク上限、執行条件を扱えるようになるでしょう。異なる人を代表する Agent が流動性を探し、経路を比べ、共通のルールのもとで条件を整える。市場は、クリックを待つ画面から、目的に応じて動くネットワークへ変わります。
人が一日中チャートを見張る必要はありません。目標、引き受けられるリスク、越えてほしくない線を伝える。Agent が市場を見守り、ノイズを除き、変化を説明し、本当に判断が必要なときに戻ってくる。
判断は人に。終わりのない監視は Agent に。人の注意を、仕事や家族や暮らしへ返すための設計です。
ローソク足はすぐには消えません。ただ、取引の中心から、過去を振り返る一つの道具へ移っていくでしょう。金融の言葉は、チャートから意図へ、クリックから委任へ、断片から連続する知性へ変わっていきます。
金融の壁を、越えられるものに
誰もが、すでに金融の中で生きています。賃金は暮らしを決め、貯蓄は将来を支え、為替は距離の値段を変え、インフレは静かに購買力を削ります。それでも、仕組みを理解し、専門家の助けを得られる人はごくわずかです。
数字はその隔たりをはっきり示します。世界銀行の Global Findex 2025によると、成人の 79%、約 49 億人が銀行またはモバイルマネーの口座を持ち、13 億人は金融口座を一つも持ちません。Capgemini の World Wealth Report 2026が数える 2025 年の富裕層は約 2530 万人です。49 億人に対して 2530 万人。約 200 倍の差があります。富裕層をプライベートウェルスマネジメントの主な利用者の目安とすれば、その特権を得ているのは口座保有者の約 0.5%。残る 99.5% は、自分だけで市場と向き合っています。
情報格差、限られたアクセス、不透明な条件、隠れた手数料、利益相反。その代償は請求書に現れず、逃した機会や届かなかった助言として、普通の人の資産を少しずつ削ります。
私たちは、この壁を越えられるものにしたい。専門的な調査、資産配分、リスク管理をすべての人へ届け、自分の資産を理解し、守り、行き先を選べるようにする。それが Agentic Finance の果たすべき役割です。
四百年の知恵を、一人ひとりの味方に
初めて投資やローン、老後の計画に向き合う人が、見慣れない数字の前に一人で立つ必要はありません。
歴史に残る投資家、金融家、銀行家が積み上げた判断と失敗。数百年の市場循環と危機から得た教訓。それらを一人の状況に合わせ、その人が分かる言葉で使えるようにする。これが、文明の蓄積を個人の力へ変えるということです。
Minara を開いたとき、背後にあるのはソフトウェアだけではありません。証拠を探し、前提を疑い、リスクを率直に伝える専門チームと、四百年分の経験があります。
資産を守る力も、リスクを理解する力も、自分の未来を選ぶ力も、特権であってはなりません。
才能に信用を、資本に行き先を
世界に才能が足りないのではありません。生まれた場所や人脈を越え、その才能が信用を得る道が足りないのです。
資金も後ろ盾もない優れたトレーダーが、能力を証明する機会を持てないことがあります。一方で、世界の資本は、確かな戦略、説明できる収益、信頼できる運用者を探しています。両者を隔てているのは、信用をつくるための高いコストです。
Agentic Finance は、戦略がどう生まれ、リスクがどう管理され、結果がどう得られたかを、透明で検証可能な履歴として残せます。プライバシーと法を守りながら、実力を言葉ではなく記録で示せます。
その履歴は、国境を越える信用になります。才能は世界中の LP や流動性提供者に見いだされ、資本は閉じた人脈の外へ進めます。眠っていた資本と埋もれていた才能が出会えば、実現できる未来は増えていきます。
Minara をつくる理由
私たちが Minara をつくり続ける理由は明快です。この未来は、すべての人のものであるべきだと信じているからです。
誰もが、自分のための調査チーム、リスクアドバイザー、時間とともに育つ金融の記憶を持てるようにしたい。金融知性を、理解でき、確かめられ、日々使える社会の力にしたいと考えています。
ソフトウェア開発では、すでに汎用知性がもたらす変化が見えています。一人が複数の知的な協働者を率い、以前ならチームが必要だった仕事を進められる。デジタル金融にも、同じ転換点が近づいています。世界を読み、人の目標を理解し、専門性を束ね、明確な境界の中で動き、経験から学ぶ知性です。
Minara は、その未来への私たちの約束です。
どれほど技術が進んでも、人の選択を尊重する。力は見える状態に置き、境界を定め、いつでも取り戻せるようにする。誰もが金融を理解し、自分を守る権利を持ち続ける。その原則を守りながら、私たちは前へ進みます。
向かい風の先へ
AI を信頼してよいのか。利用者がそう問うのは当然です。厳しい問いは、安全性、透明性、人の主導権をより強くします。
既存の事業者も、規制当局も私たちを問い続けるでしょう。情報格差や閉じた経路は長く事業を守ってきました。金融安定、消費者保護、マネーロンダリング対策、市場の公正さには重い公共責任があります。私たちは、その議論から逃げません。
疑いには証拠で、不安には確かめられる仕組みで、力には明確な限界で答えます。規制当局、研究者、開発者、公共の利益を考えるすべての人と、次の時代にふさわしいルールをつくります。
速さのために安全を手放すことはありません。同時に、古い摩擦を残すために歩みを止めることもありません。人を守る境界は強くし、独占と不透明さを守る壁は低くする。それが私たちの進み方です。
ともに、この未来を
私たちが望むのは、金融知性がすべての人の力になる世界です。生まれた場所や経歴、人脈が機会を決めず、実力が見いだされ、資本が信頼できる人へ届く世界です。
この未来は、開かれた場所で、ともにつくらなければなりません。開発者、研究者、投資家、規制に携わる人、そして金融の分かりにくい言葉の外に置かれてきた人。その全員に、未来を形づくる席があります。
四百年前、株式は多くの人に会社の未来を持つ道を開きました。いま Agentic Finance は、一人ひとりが自分の金融の未来を選ぶための力になれます。
未来は、待っているだけではつくれません。ぜひ、一緒につくってください。
Lowes
Minara 共同創業者兼 CEO